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善福寺の家

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木造二階建て住宅をリノベーションにより「家開き」していこう、という出発点からこの計画は始まりました。

ここで暮らす家族とは、訪れた友人や近所付き合いまでを含めた人々と言ってもよいかもしれません。

家を開くということは、暮らしや環境を外に向けて開くと同時に、外の環境も中に引込んでいます。

 

一階の半分では、木の床がキッチンから道路まで点在しながら居場所を広げています。

ダイニングのフローリングがテラスとなり庭まで延び、庭先では塀を一部解体したベンチに居場所が繋がり、道端でくつろげる場所になります。

一階のもう半分は、玄関と呼ぶには大きな土間が外の道路から駐車場、アプローチへとひな壇を上がるように家の中まで入り込んでいます。

天井はそれに呼応するように、半分だけ解体して、既存の室内を広げています。

この家には家開きの用意として、浴室とは別にシャワー室を設け、リビングを宿泊室として使えるような障子建具も設えています。

 

階段室にはこの家で一つだけ曲面の壁を用いて、白い壁で上下階を繋いでいます。

 

二階ではきれいに組まれていた屋根の軸組を、北側の半分だけ天井を解体して現しています。

多人数の人が集まれる広間のような場所が、高さ方向にも家を広げています。

隠れていた端正な軸組は、どこか鳥居のような神妙な雰囲気をもつ表情で自然光や照明の陰影をつくっています。

南側の半分は、既存の天井と襖をそのまま残し、寝室として家の一番奥まった場所となっています。

 

外構では、既存の門扉や駐車ゲートを撤去すると、門柱や境界塀が遺跡のように残りました。

落ち着いた住宅街で、ほどよい敷居としてそれらは機能しています。

 

当初考えていた家開きは、既存の住宅が重ねて来たこの場所での歳月も相まって、家ひとつの話しではなく地域と繋がった開き方へとスタートを切っています。

 

 

設計監理:田岡博之、高橋小百合

構造設計:mono  森永信行

施工:八十堂  河口哲夫

写真:太田拓実